CoEとは?優秀な人材・ノウハウを集約して企業競争力をアップ

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ビジネスの複雑化、高度化、不確実性がますます進展し、変化も速い現代の経営環境においては、企業にとって重要な事業テーマや、より早い開発が必要な業務などについては、社内の優秀な人材やノウハウを各組織に点在・分散させて業務を進めるのは非効率です。1つの横断組織に集約することで、業務の集中による質の向上、ノウハウの蓄積と共有が推進でき、業務プロセスのスピードアップが可能です。例えば、企業にとって不可欠なデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進や、AI(人工知能)、ロボットなど競争の激しい技術分野の開発の推進を効果的に行うには、専門性を持った優秀な人材と設備を全社横断組織として集約・運用することで効率化を図れるCoE(Center of Excellence)と呼ばれる組織形態・仕組みが必要です。CoEとは何か、計画業務推進に向けてのCoEの必要性、およびCoE導入のメリットについて解説します。

 

CoEとは?

CoEとは、組織に散らばる優秀な人材・ノウハウ・設備などのリソースを横断組織として1カ所に集約し、目的・目標を達成するために効率化・スピードアップを図る組織・役割のことです。CoEはもともと、1940~50年代に米国カリフォルニア州のスタンフォード大学で、優秀な卒業生が東海岸へ流出するのを防ぐため、全米から著名な教授や優秀なスタッフと最先端の設備環境を用意し、大学の地位を世界的に高めるための学究拠点を設立したことが始まりとされています。日本語では、「中核的研究拠点」とも訳されます。

企業にもこの考え方が浸透し、全社を挙げて取り組むプロジェクトでは、部門の枠をこえた組織横断チームとして、重要な意思決定の一端を担います。CoE設立にあたっては、ミッションを遂行するために、社内だけでなく社外からも最適なスキルや専門性を持つ人材が集められます。社内から集められたメンバーは、メイン業務と兼任、あるいは専任として業務にあたります。
企業経営のデジタル化が進む現代では、CoEは社内にナレッジギャップがある場合にも、部署間の連携を深めるために設けられます。例えば、専門的な知識が必要なAI(人工知能)やRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を業務に活用することが必要な場合などです。CoEは企業にとって重要な業務を効率的にスピードアップしてベストプラクティスで推進できます。

 

CoEの果たす役割と導入するメリット

CoEが組織において果たす役割とメリットは7つあります。
 

  • ガバナンス機能を果たして組織間の合理的な調整をスムーズに実行できる

全社横断組織であるCoEは、施策の意思統一・意思決定・プライオリティ付け、IT部門/マーケティング部門など関係する複数部門との調整などガバナンス機能を果たします。これにより、セクショナリズムの弊害を排し、ミッション達成に必要な業務の推進を可能にします。

  • ノウハウ、情報を集積し全社で共有し活用できる

業務の効率化を図るには、過去の成功した施策を評価し、良かったものを再利用していく仕組み作りが大切です。しかし、縦割り型組織では全社で共通して再利用できるノウハウや情報を集積できません。CoEは組織を横断して活動できるため、ナレッジマネジメントを主導でき、社内に散らばったノウハウを収集、アーカイブして再利用の促進を可能にします。

  • 全社として戦略を統一し、効果を測定できる

通常、CoEは経営層直属の全社的な意思決定、プロジェクト推進機関として位置づけられます。特に、施策の効果測定はCoEが果たすべき重要な役割・機能のひとつです。各担当者・部門が効果測定を行うケースでは各部門の成果が最重要視され、全社にとって最適とならない問題が起こります。そこで、CoEには、全社最適の視点から効果を測定し、その成果・課題をフィードバックする役割があります。また、経営陣に対しては、個々の現場で推進されている施策を集約し、その結果をとりまとめて経営判断に役立つ情報を提供します。

  • 社内教育や研修で専門性の強化を図りやすい

CoEだけで完結してすべてのミッションを推進できるわけではありません。ミッションに必要なスキル、知識、ノウハウを共有するため研修やセミナーなどを定期的に開催し、社内のレベルアップを担う役割を果たします。また、現場に対してミッション達成に必要なコンサルティングも積極的に行わねばなりません。これにより、全社として推進すべき業務に必要なスキル、知識、ノウハウを全社に啓発することが可能です。

  • 経営層による権威付けでミッションの推進が容易にできる

CoEの存在意義は会社の目標・目的にマッチし、必須であることから、組織横断で手掛けるCoEの活動には経営層によるコミットメントが得られています。そのため、人材の確保やデータの取得、各現場への研修などの個別タスクが推進しやすく、ミッション達成への業務活動が容易です。

  • 社内の優秀な人材を確保できる

経営層がコミットする全社的なミッションは、社内からCoEに最適な人材を選抜して集められます。ビジネスに強い人材は現業部門から、データ分析に強い人材はIT部門からというようにベストな人材を確保できます。その結果、最高・最善の方法で効率的にスピードアップしてミッションを推進できます。

  • 全社ミッションとして社内文化を主導する

CoEを成功に導くには社内文化の醸成が欠かせません。CoEが推進するミッションを達成するためには全社の協力・支援が必要になるからです。全社的に部門横断で集められたCoEのメンバーはチーム内でミッション・戦略を立て、それを社内の各部門、各個人が共有できるように伝道師的な役割を果たします。このような企業文化を醸成できれば、組織がより自律的に動くメリットが生まれます。

 

DX時代の企業経営にCoEが必要な理由

現代の経営環境は、ビジネスの複雑化、高度化、不確実性がますます進展し、変化も速く、激しくなっています。また、デジタル化が進展し、DX(Digital Transformation:デジタルトランスフォーメーション)の重要性が叫ばれ、ビジネスシーンでは軽視できないほどの大きな流れが起きています。DXとは、経験知に基づくアナログ経営からデータドリブンな組織に変革することで、意思決定を迅速化させようという取り組みです。
DXには経営データの活用が欠かせませんが、縦割り型組織ではいわゆる「サイロ化」してしまい、データの連携を取りづらい問題が生じています。こうした場合に、効果を発揮するのが全社の優れた人材やノウハウ・設備など1カ所に集め、全社横断型で業務を推進できるCoEです。IT専門調査会社のIDC Japanは、クラウドの最適化とDXの推進に向け、CoEが果たす役割の重要性が高まると指摘しています。

現代の経営環境やDXの推進は全社で行うべきことであることから、CoEを設置して対応していかなければ、多くの企業が抱えている以下の課題を解決できず、意思決定が遅くなり時代に後れ、競合企業に後れを取ってしまいます。

  • 同一のテーマ・業務を個別組織で行い業務の効率が低下
  • 組織間の情報の共有が希薄でノウハウの蓄積・活用がなされず業務の質・効率が低下
  • 個別組織の最適化を優先するセクショナリズムで長期的視野が欠け、全社最適が遅れ競争力が低下
  • 優秀な人材の分散はスピードが重要な経営環境下では非効率で、かつ専門性の強化も困難

 

CoEは企業競争力の源泉となる組織

CoEが果たす役割やメリット、その重要性を紹介しました。急激に変革している時代には、ベストプラクティスと必要なツール・設備が備わった環境で専門スキルの高いスタッフが1カ所に集中するCoEで、データを駆使して経営のスピードアップを図ることが必要です。デジタル化の進展はますますスピードアップし、経営環境の不確実性や変動は激しく、速くなっていることからCoEが果たす役割はますます重要性を増していきます。

関連ブログ:コネクテッド プランニング CoEの立ち上げ